「なあ、ホーク」
久しぶりに町に到着し、1日自由行動をしようということになり、ホークアイの買い物になんとなく付き合っていたケヴィンは突然、彼の髪を引っ張って呼んだ。
「いてっ!・・・ケ〜ヴィ〜ン、髪を引っ張るなって何度も言ってるだろうが〜!」
「ごめん・・・。」
「で?なんだ?」
「"誕生日"って何する日なんだ?」
「はあ?」
「あした、シャルロットの誕生日なんだって。・・・オイラ、シャルロットになんかしてあげたくて・・・。」
きのう、ケヴィンはシャルロットから2日後は自分の誕生日であることをえんえんときかされたのだ。ただ、話している途中、ケヴィンは時折シャルロットが寂しそうな顔をするのを気にしていた。
「う〜ん、オレもそんな誕生日とかになんかやったわけじゃないけど・・・。プレゼントをあげるとかだな。」
「プレゼント?」
「ああ、シャルロットだからな。喜んでそのへん飛び回ってすっ転ぶんじゃねえか?」
いささか暴言とも言えるような台詞をはきながらホークアイは自分の財布を見て回っている。
「おう、2人ともこんなとこにいたのか。」
「デュラン。」
「よお、お前も財布見に来たのか?」
「うんにゃ、俺はベルト見に来た。ここの穴んとこもう限界っぽいから。」
「デュラン、シャルロットってなにを"ぷれぜんと"すれば、喜ぶと思う?」
「あ?」
「明日、シャルロットの誕生日なんだとよ。ケヴィン、シャルロットになんかあげたいらしいぜ。」
「さあ?所詮ガキだからな。絵本とかおもちゃとかでいいんじゃねえ?」
「って、明日ってクリスマスイブじゃん。シャルロットのやつ、クリスマスに誕生日なのかよ。」
すっかり考え込んでしまったケヴィンにホークアイは、
「シャルロットがもらって喜びそうなものでいいんじゃねえ?オレ、野暮用あるから。じゃあな。」
といって、会計を済ませ、出て行った。
「これは、俺たちがどうこう言える問題じゃねえよ。ケヴィンが、シャルロットに合いそうだと思うものをやりゃいいんだ。じゃ。」
デュランもそそくさと出て行く。
「・・・・シャルロットに・・・似合う物・・・かあ・・・。」
ケヴィンは店の中でまた思考の渦の中に入り込んでいった。
「シャルロット、ちょっと、いいか?」
「なんでちか、ケヴィンしゃん?」
焦っているのか、幾分か歩調の早いケヴィンに、シャルロットはぽてぽてと後をついていく。
ケヴィンにつれてこられたのは、宿のバルコニー。
「・・・これ。」
どもり気味になりながら、シャルロットの目の前に突き出したのは――――淡いピンク色をしたガラス玉のブレスレット。半日悩んだ結果、露店で買ったものだった。
「シャルロット、今日誕生日だろ?だから・・・うわっ!」
突然シャルロットがケヴィンに飛びついてきた。
「ありがとしゃんでち!すっごくうれしいでちよ!」
「・・・あ、うん・・・。」
シャルロットは早速ブレスレットをつけようとして金具と格闘している。
「つけてあげる。」
金具をはずし、シャルロットの右手につけてあげる。
ピンクのガラス玉が、小さくてかわいいシャルロットの手によく似合っていた。
「シャルロット、これ、いっしょーのたからものにしまちね。」
「うん。よろこんでくれて、うれしい。」
「じゃ、なかにはいりまちょうか。」
「うん。」
2人は仲良く中に入っていった。
「あら、リース、どうしたの、嬉しそうな顔しちゃって。」
幾分、顔を赤らめながら、嬉しそうに部屋に戻ってきたリースに、アンジェラが尋ねた。
「えっ、いえ、そんな・・・。どうしたんです、そのピアス?」
「え、あ、いや・・・デュランが・・・。」
アンジェラの耳には海のように蒼い色の石のピアスがあった。
デュランにもらったものだった。
「リースもどうしたのよ、そのペンダント?」
「あ、あの・・・ホークアイが・・・。」
リースの胸元には、小さなゴールドのクラウンが光っている。
ホークアイにもらったものだ。
デュランもホークアイも、あの後、それぞれのプレゼントを見てまわっていたらしい。
「旅でクリスマスどころじゃないっておもってたけど、いいクリスマスになったじゃないの。」
「はい。」
2人は幸せそうな笑みを浮かべて、恥ずかしそうに笑った。
―――――――この気持ちをあなたに
Present for――――――
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